「スパイス料理の初心者にとって、入り口のレシピになれたらうれしい」夫婦料理ユニット・ぐっち夫婦—スパイスを語る
「日々の暮らしを楽しく美味しく。ちょっとおしゃれに」をテーマに、おいしくて誰でも簡単に作れるお手軽レシピを発信するぐっち夫婦。多彩なレシピを生み出すお二人にとって、スパイスとハーブは相棒のような存在だと言います。
今回はスパイス料理のインスピレーションの源や、日々の料理に取り入れるコツ、エスビー食品noteのコンセプトである「つくるよろこびを、いっしょに。」への考えなどを教えてもらいました。
生活に寄り添い、皆さんの食卓を彩るレシピを届けたい。
——これまでに数々のレシピを発信されてきましたが、「ぐっち夫婦」としてユニットを組む前もおうちごはんをSNSに投稿されていたんですよね。
SHINO そうです。家で作った手料理を撮って投稿していたら「作り方を教えて!」という問い合わせを多くいただくようになって。もともとレシピづくりや料理を仕事にすることに憧れがあったので、思い切って勤めていた会社を辞め、二人で料理家の道を歩んでいく覚悟を決めました。
——お二人が掲げている「日々の暮らしを楽しく美味しく。ちょっとおしゃれに」というコンセプトには、どんな想いが込められているんですか?
Tatsuya 僕たちが提案したいのは、SNSでバズる料理というより、皆さんが日常でおいしく食べられる料理。だからスーパーで普通に手に入る材料で、誰にでも作りやすいレシピを紹介するよう心がけています。それにプラスして、旬の食材を取り入れたり、盛り付けや食器にこだわったり、さらに食卓が楽しくおしゃれになるヒントも散りばめているんです。
SHINO 私たち自身が家で食べる料理を作る時には、旅先の少し変わった食材を使ったり、道の駅でちょっと良い野菜を買って楽しんだりすることもあります。先日沖縄旅行に行った時は、地元の食材を買ってきて、シークヮーサーのマリネや島豆腐の麻婆豆腐などを作ってみました。その地域の暮らしと繋がるような楽しみ方ができるのも、料理の良いところですね。
——Tatsuyaさんはガッツリ系のおかずが得意なんですよね。
Tatsuya 口に入れた瞬間に「あ、おいしい!」と思える味を意識しています。濃い味ではなくて、スパイスで香りを出したり下味をつけたりすることで、食べ進めるほどおいしくなる味に仕上げるんです。魚やお肉などの動物性タンパク質をしっかりと取り入れ、食べごたえがありご飯にもお酒にも合うおかずが僕の好みですね。
——SHINOさんは野菜を使ったお料理が多い印象です。
SHINO 私は実家で祖父母が八百屋を営んでいたこともあり、野菜は幼い頃から親しみのある存在。栄養学も学んでいたので、一皿でバランス良く栄養が摂れるような組み合わせを考えるようになりました。例えば小松菜と人参の和え物に、ツナでタンパク質をプラスしてみるとか。あと、野菜の旬はもちろん、いろいろな食感や旨味、香りを楽しむことも意識しています。
——スパイス&ハーブを使ったレシピもよく紹介されていますが、思い出に残る料理やエピソードはありますか?
Tatsuya 僕は大学4年間、イタリアンレストランでアルバイトをしていて、そこで料理を教わりました。初めてハーブの使い方を知ったのは、そのお店が前菜で出していたかぼちゃのマリネ。素揚げしたかぼちゃを、塩とオリーブオイル、バルサミコ酢、そして油で揚げたローズマリーでマリネしたシンプルなレシピなのですが、とってもおいしかった。それまでハーブなんてあまり触れたことがなかったから、ローズマリーを入れるだけで、こんなに味や香りに奥行きが出るのか! と、衝撃的でしたね。そこからどんどん興味が湧いて、各国のスパイスやハーブの使い方を学ぶようになりました。
SHINO このかぼちゃのマリネは今でもたまに作ってくれるのですが、私もお気に入りです。私にとって最初に触れたスパイスは、シナモンだと思います。バナナシナモントーストやテーマパークのチュロスなど、小さい頃から馴染みがあるお菓子に使われている印象が強いです。今ではチャイやハンバーグ、お菓子にと、なんにでも使える万能スパイスとして重宝していますよ。
おうちごはんのアイデアはおいしいものを食べて考える!
——おうちごはんのレシピを紹介するお二人ですが、外食を利用することもあるんでしょうか?
SHINO 外食も大好きです! 最近は子供が生まれたので気軽には行けませんが、二人で食べたいものや気になるお店を探して予約します。
Tatsuya 外で食事をすると、新しいインプットになるんです。おいしいものに出会ったら、つい「これ何が入っているんだろう」という熱い談義になりがち(笑)。そうしてインスピレーションを得て、家で味を再現してみることも多いです。
——Tatsuyaさんはこれまで30カ国以上の国に行かれたとか! いろんな料理に出合われたでしょうね。
Tatsuya 大学生の頃から旅行が好きで、もちろん食べ歩きをすることは大前提です。行き先も食べたいもので選ぶことのほうが多いかもしれません。
SHINO 今でもおいしいものがある土地を目的地にするよね。去年タイに行った時も、現地の味を舌で覚えようと二人で必死でした。
Tatsuya 国内でも海外でもガイドブックは持っていかず、必ず現地の人におすすめのお店を聞くことにしているんです。そのほうが、本当においしくて地元で愛されているお店に出合えること間違いなしですから。
——ローカルな情報を深掘りするんですね。海外で印象的だったスパイス料理はありましたか?
Tatsuya まず日本人よりも、スパイスやハーブの使い方がカジュアルで上手だな、と感心しました。お肉の下味にも野菜にも、ちょっとしたパンを焼く時にも使う。まるで塩こしょうをするように使いこなしていて、彼らにとってはこれがおふくろの味であり、当たり前の文化なんだなあ、と思いました。以前、インド人とルームシェアしていた時は、彼が作ってくれたカレーやビリヤニが最高においしかった。レシピを聞いておけばよかったなぁ。
SHINO そう思うと、山椒とかわさびとか、私達がよく使う日本独自のスパイスもおもしろいよね。
Tatsuya そうだね。和のスパイスも面白くて、僕たちもよくレシピに取り入れています。実山椒は旬の時に下処理をして、冷凍庫にストックしてあります。炊き込みご飯、煮物、鍋、炒めものなど、何にでも入れられますね。今日ちょうど、YouTube用に鯛めしの動画を撮影したんですが、そこに入れてもおいしかったです。
——ちなみにお二人自身をそれぞれスパイスに例えると、なんだと思いますか?
Tatsuya 僕は割とペッパー系が好きなので、それですかね。ピリッとした刺激を求めています。
SHINO 難しいですねえ……私はシナモンかな。バニラビーンズほど甘くないけれど、素朴な優しい甘みでほっこりする感じ。
Tatsuya ピリッとスパイシーと、ほっこり甘いで、僕たちはバランスが良いかもね(笑)。
最初の一歩はクミンから! スパイス料理は難しくない。
——改めてお聞きしたいのですが、お二人が思うスパイスやハーブの面白さってどんなところでしょうか?
SHINO 入れるだけで「どうやって作ったの?」と聞かれるような、料理を特別なものに変身させるパワーがあるところ。例えば、ちょっとした豚肉とピーマンの炒めものでも、最後に五香粉をパラッとかけるだけで、一気に本格的な中華味になります。スパイスもハーブも大好きです!
——お二人が好きなスパイスの使い方はありますか?
Tatsuya 僕はキャンプが好きなので、BBQ用のお肉を前日からスパイスと一緒に漬け込んで、下味をつけておきます。臭み消しにはタイムやローズマリーを使う。僕は自分でスパイスをブレンドしますが、エスビー食品さんではシーズニングが売っているので便利ですよね。BBQならオレンジ色の「マジックソルト ガーリック」がお肉にすごく合うので好きです。
SHINO 私はディルがとても好きです。サラダに入れたり、スモークサーモンとヨーグルトとマヨネーズで和えたりするだけでもおいしくなります。そんなに高級なハーブではないのに、ディルを入れるだけで食卓がリッチになる気がしますよね。
Tatsuya 最近インド人の友人に聞いて驚いたのですが、なんと彼らは離乳食にもスパイスを入れるそうなんです! その友人に勧められてネットで購入したスパイスが、野菜に合うという「ヒングパウダー」。来春に離乳食のレシピサイトをオープンする予定なので、そこで紹介するかもしれません。
——スパイス離乳食とは新しい! 家庭でスパイスやハーブを使うのは、どうしてもハードルが高いイメージがあります。
Tatsuya 肩ひじ張らずに、まずは何にでもかけてみたら良いと思います。使わないと香りもわからないし、僕もよく何と何が合うのか実験感覚で試していますよ。
SHINO 私たちがレシピでスパイスを使う時は、できるだけ混ぜたりかけたりするだけで良いようにしています。ぐっち夫婦のレシピを、スパイス料理の入り口にしてくれたらうれしいです。最近は他の人のYouTubeチャンネルでも本格的なスパイスカレーの作り方や、レストランシェフのレシピなどいろんなレシピが発信されているので、慣れたらレベルアップしていく楽しみもありますよね。
——初心者の方におすすめの、使いやすいスパイスはありますか?
Tatsuya まずはクミンと仲良くなってみたらいいと思います。カレーに似た香りで馴染みやすく、辛味もないので多少入れすぎてしまっても大丈夫。家族みんなで食べられます。野菜炒めや野菜のマリネ、お米を炊く時に入れてもおいしいですよ。この前食べて驚いたのは、オイスターソースとカレー粉とクミンの組み合わせ。魚介類の炒めものに使ってみたのですが、中華調味料とインドのスパイスがこんなに合うんだ!と新発見でした。
SHINO カレーを食べる時に、クミンライスを炊くのは最高だね。お肉との相性もいいので、唐揚げやカツを作る時の衣に入れるのもおすすめですよ!
レシピで皆さんの大切な人が喜んでくれるのが、私たちの「つくるよろこび」
——ぐっち夫婦にとって「つくるよろこび」や、「いっしょに」料理することの良さを感じる瞬間は、どんな時ですか?
SHINO 料理している時も楽しいですが、その先にある食べる方の笑顔が一番のよろこびです。実際に私たちのレシピで料理したよ、というメッセージをいただくのですが、「子供が野菜を食べてくれた」「家族に『また作って!』と言われた」など、大切な人がよろこんでくれたという言葉が特にうれしいですね。レシピを通して皆さんと一緒に子育てしたり、料理をしたりしているような気持ちになります。
Tatsuya SHINOさんと一緒に料理する時は、今日あったことを話しながら味付けの相談をするなど、すごく良い時間を過ごせています。レシピを作るときも二人で意見を出し合うことで、アイデアが広がりますね。数年後、息子と三人で料理をする日が来るのをすごく楽しみにしています。
文:井上麻子 / 撮影:Ryo Yoshiya
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