ひと手間かけた、シェフの家ごはん。マルディグラ・和知徹さんが作る「夏野菜たっぷり片面カツカレー」
日々料理に向き合っているプロの料理人は、普段はどんなふうに「家ごはん」を楽しんでいるんだろう? 私たちがよく食べているような家庭料理でも、食材の扱い方や火の入れ方、スパイス&ハーブの使い方など、プロの料理人だからこそ知っている「ちょっとしたひと手間」を加えることで、おいしい変化が楽しめるのかもしれません。
今回レシピを教わるのは、銀座で20年以上愛されているフレンチレストラン「マルディグラ」のオーナーシェフ・和知徹さん。エスビー食品の「肉の匠の秘伝ブレンド マイスターズスパイス(MEISTER’S SPICE)」の監修も務めている和知さんが、いつものカレーを“南仏風”にアレンジし、この季節にぴったりの「夏野菜たっぷり片面カツカレー」を提案してくれました!
いつものカレーを“南仏風”にアレンジ
和知さん:このカレーのポイントは、オリーブ、ケッパー、アンチョビを使うこと。コクのあるオリーブの実を入れることで、簡単にいつもと違う南仏風のカレーになるんですよ。オリーブはケッパーとの相性もすごく良くて、ケッパーの柔らかい酸味が加わることで味のバランスをとることができます。アンチョビは醤油に近い感覚で、旨みを足してくれる存在です。
フレンチシェフの和知さんならではの食材の組み合わせですね。
和知さん:おうちのカレーであっても、ちょっとした工夫で旨みや香りの魅力が増すようなレシピにしたいという考えがありました。そのため、野菜を最初から煮込むのではなく、アク抜きをしてから蒸し焼きにするのも大きなポイントです。塩でアク抜きしておくことで野菜の味が濃くなり、じっくり蒸すから野菜の旨みたっぷりのお出汁も出て、形も崩れません。2日目にはさらに具材がルウになじんでまとまりが出てくるので、次の日の味の変化もぜひ楽しんでみてください。
では、さっそく作り方を見ていきましょう。
夏野菜たっぷり片面カツカレーの作り方
<カレーの作り方>
【1】
マッシュルームは半割りに、ズッキーニとなすは2cmほどの輪切り、玉ねぎはくし切り、パプリカはひと口大に切っておく。セロリは香り出しのため切らずにそのまま使います。
和知さん:野菜は小さすぎると形が崩れて溶けてしまうため、少し厚め・大きめに切るのがおすすめです。マッシュルームはなくても作れますが、旨みが出るのであればぜひ入れてみてください。
カットした野菜を大きめのボウルに入れ、塩小さじ1/2を加えて全体になじませたら、30分ほどおいてアク抜きをします。野菜から出た水分は捨てましょう。
和知さん:30分が理想ですが、もし時間がなければ10分くらいでも大丈夫です。丁寧にアクを抜くことで、味が濃くなって色もよくなりますし、水分が抜けるので火も入りやすくなるんです。
【2】
にんにくは粗めのみじん切りにし、別にしておきます。
【3】
鍋を中火にかけて【1】の野菜を入れたら、蓋をして「5分蒸し焼き」を3回繰り返します(合計15分)。5分経つごとに焦げないよう全体をかき混ぜましょう。3回目の蒸し焼き前には、【2】のにんにくを野菜の上にのせるように加えます。 ※油はひかなくてOK
和知さん:ルウに油が入っているので、蒸し焼きの段階では油を使わないのがポイント。こうすることで、スッキリとしたカレーに仕上がります。にんにくはとくに焦げやすいため、野菜の上にのせるだけでかき混ぜなくて大丈夫です。
その後、焦げないように全体を混ぜながら中火で5分加熱します。
和知さん:だんだん野菜の糖分がキャラメリゼされて茶色っぽく色づいてきます。ラタトゥイユのようにこのまま食べてもおいしいですよ。
【5】
野菜の鍋に水を加え、強火で沸かします。沸いたら中火にしてオリーブ、ケッパー、アンチョビ(細かく刻んでおく)、ルウを鍋に加え、全体を混ぜましょう。
和知さん:この時、あらかじめ野菜の鍋の煮汁を適量使って別の器でルウを溶かしておきましょう。鍋にルウを固形のまま入れるのではなく、溶かしてから加えることで、煮込む時間が短くなり、野菜が崩れにくくなります。
【6】
カレーの仕上げにかかります。ブラックペッパーをラップに包み、ボウルなどを使って粗めに砕きます。 ※ペッパーミルで挽いてもOK
【7】
別の小鍋にバター、ブラックペッパー、鷹の爪を入れ、中火で全体が茶色っぽく色づくまで加熱したら、【5】の鍋に加えます。全体がなじんでカレーにとろみが出てきたら完成です。
和知さん:加熱したバターとスパイスを加えることで、まろやかで香りもよくなります。バターが色づき、鷹の爪が少し黒ずんでくるまで、香りを最大限に引き出しましょう。鍋を沸かしている間にやっておくと、さらにスムーズですよ。
<片面カツの作り方>
【1】
豚ロースは反り返りを防ぐため、両端に5~6カ所ほど、1cm程度の切り込みを入れます。
脂・筋を断つようなイメージで、中央にも5mmほどの深さで切り込みを入れます。
マイスターズスパイスを片面全体にまぶし、さらに粉チーズをかけて手でしっかり押さえましょう。
和知さん:下味をしっかりつけておくと、スパイシーかつコクが出るのでおすすめです。焼くとチーズが溶けて、この後につけるパン粉の糊のような役割も果たしてくれます。
【2】
同じ面に強力粉をまぶして卵液につけたら、たっぷりとパン粉をつけます(いずれも片面のみ)。
和知さん:豚ロースは片面にだけパン粉をつけて揚げ焼きにしていくことで、油も少なくてすみますし、気軽にフライものが楽しめます。片面だけなので手があまり汚れず、一人で調理しやすいのもうれしいところ。
【3】
フライパンに大さじ3のサラダオイルをひいて中火にかけ、温まったらパン粉のついていない面から焼いていきます。
このとき、バチバチ!と大きな音が出ると火が強すぎるので、ジュクジュクと静かな焼き音がする程度に調節しましょう。
【4】
焼き色がついてきたらひっくり返します(フォークを使うとやりやすい)。フライパンの端にバターを入れて溶かし、スプーンで肉に何度もかけながら火を通していき、パン粉に綺麗な焼き色がついたら完成です。
和知さん:衣のついた面を焼いているときは、なるべく動かさないように。火加減は基本的には中火ですが、音や焼き色をみながら調節してあげてください。
盛り付けたカレーにカツをのせて、バジルを添えたらできあがり。
カリッと揚げ焼きにしたカツ、食感豊かな野菜、オリーブやケッパーのフレッシュな風味が一体になった「夏野菜たっぷり片面カツカレー」。ほどよい酸味と辛味、スパイスの香りがにぎやかで楽しい、暑い日にぴったりの一皿です。
和知さん:ご飯なしでお酒のおつまみにするのもちょうどいいんです。白ワインやロゼ、ビール、ハイボールなんかにも合うと思いますよ。
家ごはんの楽しさは、作る過程まで味わえること
最後に、今回のようにひと手間かけながらも、家でごはんを作る楽しさについてお聞きしました。
和知さん:お料理って、結果だけじゃなく過程が楽しいものだと僕は思うんです。調理しながら味見をしたり、食材の変化を観察したり、そのときどきの香りを楽しむ。「色合いがいいな」とか「夏っぽいな」とか、色々なことを感じられるのが家ごはんの魅力なんじゃないでしょうか。そういう時間が息抜きや癒しにもなってくれるから、最高ですよね。
いつもの料理をぐっと豊かにしてくれるヒントがちりばめられた和知さんのレシピ。ぜひ楽しみながら作ってみてくださいね。
レシピ・監修:マルディ グラ・和知徹/ 文:坂崎麻結 /撮影:大崎あゆみ
◎献立に迷ったら… →エスビー食品レシピサイト
◎スパイス&ハーブを中心とした各種情報をお届け! →エスビー食品公式facebook
◎レシピ、商品・イベント・キャンペーン情報などをつぶやいています →エスビー食品公式twitter