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みんなの好きを作りたくて: プロ目線のカレーパン対談

日本の惣菜パンの代表選手のひとつ、カレーパン。今回はカレーパンについて、3人のプロが熱く語り合います。本当においしいカレーパンとは? その中には、知られざる工夫がぎゅっと詰まっていました。カレーパン好きから日々パンを作っている方まで必見の“読んで味わう”カレーパン談義、最後までご覧ください!

今回語り合うのは、
新しい町のパン屋さんの姿を切り拓くビーバーブレッド店主割田健一さん、製菓製パンの材料や道具の販売及びレシピを掲載する通販サイト「cotta(コッタ)」の武藤梨沙さん、そしてカレーパンの中身である業務用「ディナービーフカレーフィリング」を企画したエスビー食品株式会社営業企画ユニットの清水さんです。(以下敬称略)

みんなが好きなパン、また食べたくなるパン

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——割田シェフがパン作りで大事にしていることは?

割田:プロの立場でいうと、サザンオールスターズ。

一同:えっ?(笑)

割田:万人受けして、長く聴いてもらえる。「いとしのエリー」を今の若い子たちが聴いたりもするし、その中で桑田佳祐さんがソロでやったりもする。つまりいろんな人が楽しめて。

食べ物って口に入れるから、聴くより見るよりもっと繊細で、個人の嗜好が強く出るんですよ。とはいえ「私はちょっとスパイシーなのが好き」「私は甘いのが好き」「辛いのが好き」ってリクエストにすべて応えるのは本当に難しい。じゃあどうするかというと、さっきのサザンオールスターズみたいに多くの人が好むラインって絶対あるので、そこを見つけ、うまく応えるのがプロ目線でまず大事にしていることです。

その上で、お客さん目線の店づくりやパン作りがありつつ、それを全部ちょっとずつ裏切らなければ驚きがない。サザンオールスターズも、いい曲を聴かせるだけじゃなくてライブでは水着の女性がバンドの横で踊ったりするわけで、演出はやはり必要です。たかがパン屋さんだけど、すごく大事なところでもある。

食べ物って、最終的には食べ終わった時の「おいしい」があると、もう一回リピートするんですよね。なので「おいしい」というのは外しちゃいけないんですけど、ただ、最初の演出は香りがいい、焼きたて、サクっとしてて、口どけがよくて、ある程度のいい大きさで、手に持つとちょっと重い、見た目重そうだけど軽かったとか、その辺をうまく使うように意識しています。

あとは、誰でも作れないと生産性が上がらないので、いかに簡単に、ちゃんと作るか、おいしいものを作れるかもポイントです。

みんなが好きな味を、手軽に叶えるディナービーフカレーフィリング

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——この商品が生まれた経緯は?

清水:もともと2020年に発売40周年を迎えたロングセラーのディナーカレーフレークという商品がありまして、大変多くのベーカリー店さんから非常にご評価、ご指名いただいているんです。

割田:見たことあります!

清水:ありがとうございます。それで、先ほど割田シェフから誰でも作れることという話がありましたけども、昨今ベーカリー店さんでも人手不足の問題があって、こうしたフレークを使ってカレーフィリングを作るより、直接メーカーのフィリングを使うようになったお店が増えていることもあって、発売40周年を機に同ブランドでのフィリングを作りました。

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割田:人手不足を考えたら、パン職人になったらすぐにパン生地を触ってもらって、上手になってもらう方がいい。だけど1年目は1日中カスタード炊いていたり、りんごのコンポート炊いていたりとか、そういう仕事しか割り振られなくて。こういうフィリングがあったら最初からパン生地を触れるので、上手に活かすことが必要ですよね。

——フィリングがあるとプロも一般ユーザーもスタートしやすくなります。

武藤:カレーパンに対する消費者の憧れってすごく強いと思います。食べたい以外にも、作りたいパンでもあるんです。メロンパン、クロワッサン、カレーパン、この3つはやっぱり好きな人が多く、いつか作ってみたいもの。でもカレーパンの中に入れてだれないカレーって、家の余ったカレーじゃできない。そのためこういったフィリング類ってcottaでも売れ筋なんですよ。その中でこちらのフィリングは多くの人に好んでもらえそうな味で、なおかつ味にこだわりがあるので、すごく喜ばれるんじゃないかなと思います。

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——味の特徴を教えてください。

清水:味については、フレークの時からフォン・ド・ボーによるビーフ感とソテー・ド・オニオンの2つの旨味、コクが特徴です。フィリングを作るにあたり、このロングセラー商品と全然違う味になってしまうと多くのお客さんも困ってしまうので、同じイメージでお使いいただけるカレーフィリングに仕上げています。

——例えば今時の好みにチューニングなどはしなかった。

清水:塩味・甘み・香辛料感・粘性など大きなトレンドに沿って味作りはしています。一方で、基本のカレーフィリングとしていろんな味に作り変えられる、お店のオリジナルの味になれる点も重要でした。お店の味をみなさんお持ちなので、味を変えられることは大事で、その意味では最大公約数を取れるポジションとなるように味作りの設計をしました。

割田:フィリングにとって万能さって大事で、パン屋さんでいうとカスタードクリームとか、ミルククリームとかですね。万能のカレーフィリングをエスビーさんが作るとこうなるんだなって感じました。

うちはフィリングを自分たちで作っているので、あまりメーカーさんのものを使っていないんですけど、今回使ってみて、ああこれ万能なんだなって感じました。もう、日本のパン屋さんのためのカレーフィリングなんじゃないかなと思うんですよね。だからこそ万能さは重要だなと。

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万能な、多くの人が好きな味だからこそ、カレーうどんにもできる、カレーライスにもなる、もしかしたらビーフシチューの隠し味にも使える、というようにイメージも膨らみますよね。主役でもいいし、隠し味的にもいいかもしれない。これでカレーのピラフ作れるとか。

——カレーパン以外にもオススメの使い方はありますか?

清水:cottaさんとの企画の中で、残ったフィリングの使い方を考えていました。例えば、タコミートを作る際に混ぜてタコスに挟んだり、タコライスにするのもいいと思います。物性が少し固いので、レトルトカレーのようにご飯にかけて食べるより、ドライカレーにするとおいしく召し上がっていただけます。あとはマッシュポテトに混ぜてカレーコロッケにするとか、カレードリアとしてご飯に乗せてチーズをかけて焼くといった活用もできます。

——フレークをフィリング化する上で難しかった点は?

清水:フレークをただ溶かしても全然違うものになってしまいます。カレーフィリングはいわゆるレトルトカレーより粘性が高いのですが、流動性が違うことでスパイスの感じ方が全く異なり、スパイスの使用量ではフィリングの方が約1.5倍多く使用しています。食べた時にディナーカレーフレークから手作りしたものと同じイメージを掴めるように工夫しました。

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つくるのも人気! カレーパン

——「cotta」には手作りを楽しむ人が多く訪れています。

武藤:新型コロナウイルスの感染拡大後、おうち時間が増えたことでパン作り、お菓子作りのニーズが急拡大したと思います。数字で見ると2020年4月〜6月の製菓材料の売り上げは昨年比約3倍、パンレシピが見られた回数は昨年比約2.5倍の高水準です。同7月の小麦粉の出荷量も昨年比約2.3倍でした。パン作りはコロナ禍による一時的なブームでなく、「新しい生活様式」の中でも定着していて、今後も広がっていくのではないでしょうか。

——アクセス数などからうかがえる人気のパンはなんですか?

武藤:パンの中でもカレーパンは強いですね。食パンやちぎりパン、カレーパン、メロンパンという嫌いな人を探す方が難しいようなパンは、レシピも人気ですし、SNSでの反響も高いですね。

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——検索数などから見えてくる時代のトレンドはありますか?

武藤:手作りで人気となると、一食となるパンですね。サンドイッチなど食事として成り立つパンです。家族のごはんを作らなきゃ! という時に、一食としてカウントできるパンがうれしいというお声は結構いただきますし、検索数からもそういったパンは伸びてきたと思います。

——食事となるパン。

武藤:甘いのも含めてですけど、ボリューミーなもの、野菜やフルーツのサンドとか。総菜や残ったおかずなどを入れると食事っぽくなってくるので、そういったパンは人気ですね。

——おうちごはんの機会が増えたことが背景ですか?

武藤:というのもあると思いますし、そういった何かを挟めるパン、包めるパンってシンプルな作り方が多いんですよ。クロワッサンとか折り込みが難しいレシピに比べたら、1つのベース生地で作れて汎用性が高かったりするので、みなさんアレンジしやすいのもポイントかなと思います。

つきないカレーパン愛と探究心

——みなさん、好みのカレーパン、理想のカレーパンを教えてください。

割田:焼きたてはどれもおいしいし、次の日おいしいのもわかるけど、じゃあ3日後でもおいしいってどうしたらいいか。うちのパンの定義で「おいしい」って次の日なんです。カレーパンも食パンもですけど、買った次の日の朝に食べたりするので、時間が経ってもおいしさをキープしたい。おいしさのゾーンを長くしたい。

すると、うちは揚げカレーパンじゃなかった。油で揚げたものって爆発的においしいんですけど、ゾーンが短い。だからうちは焼きカレーパンなんです。焼きにすることで、ゾーンを長くする。あとはやっぱり牛肉。うちは牛すじが入って、野菜もある程度入れてというところですかね。

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武藤:私は一般消費者目線な感じですが、チーズが中に入っているとか上にかかっているカレーパンが好きです。王道タイプも好きですけど、いまアレンジカレーパン特集なんかに目を通すと、見たことない組み合わせとか、半熟卵が入っているとか、キューブ型とかもあるので、そういう目新しいものをパン屋さんではつい買ってしまいます。職業柄もあると思うんですけど、これおいしそう! cottaでもレシピ作れるかなって。
ちなみに味でいうと、私はスパイシーな辛口派です。

清水:私が好きなカレーパンは、生地がおいしいパンがおいしいものかなと。

武藤:中身は?

一同:(笑)

清水:さっきの2日目でもおいしいって、結局生地にもよるので。中身だけで持たせられるわけではなくて、フィリングはおいしさを支えるパーツの1つなんじゃないかなと。作っていただいたおいしいパン生地をさらにおいしくすることが、カレーフィリングを作る立場として目指すところかなと思います。

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——好きなタイプでいうと?

清水:えーと、爆発的においしいのは揚げたて、これがピークだと思いますね。

——もし揚げタイプで甘口と辛口あったらどちらを選びますか?

清水:甘口ですね。

割田:えっ、スパイシーではない方?

清水:スパイシーと辛いって厳密には違うんですよ。甘口でもスパイシーなものが最近増えています。それで、辛口といわれるものはスパイシーというより辛さのみに振っていることが多い気がして、カレー自体の味とかパンとの調和を考えたときには、甘口の方がおいしく食べられるものが多いかなと思います。

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——最後に、エスビー食品とcottaのコラボにより3/19に開催される、割田シェフ出演のライブ配信について。そこで紹介するカレーパンレシピ、こだわりの部分を教えてください。(編注:ライブ配信について詳しくは記事末尾をご覧ください

割田:このディナービーフカレーフィリングはだいたいの具がうまくすりつぶされて入っています。とはいえカレーパンは、いろいろゴロゴロ入っている方が好きって人は多い。じゃあどうするか。フォン・ド・ボーとソテー・ド・オニオンが入っていて、味の骨格はもうしっかりしている。そこでより味をまろやかに、食感としてもにぎやかになるように、肉と玉ねぎだけ少し絡めて作ります。冷蔵庫に余っている食材を使うような気分です。

パン生地に関していうと、みんなに好かれる、次の日に食べてもおいしい生地にしたいので、意外と砂糖を多めにしています。フランスのパン生地と一緒で、昔は日持ちさせるためもあって、配合上糖分がすごく多いんですよ。糖分で生地が痛みづらくなる。薬品などの添加物でしっとり柔らかくするんじゃなくて、糖分で。そういうのを日本の菓子パンにも取り入れて、しっとりさがより続くようにします

また今回、グラニュー糖だけだと直線的で歯に入ってくるような甘さになってしまうので、キビ糖のまろやかさも入れながら糖分を増やして、次の日でもしっとりさせておく、そういう配合にしています。

カレーパンを作ったことがある方もこれから作ってみたい方も、ぜひご覧いただけたらと思います。

——みなさまありがとうございました。

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おわりに

エスビー食品では、みなさんがスーパーなどで目にする以外にも、実は様々な商品を送り出しています。社員一人ひとりが時代の声に耳を傾けながら、日々の「おいしい!」を作るお手伝いができたら。その想いで、これからも商品の企画や、情報発信に取り組んでいきます。

この対談で登場した「ディナービーフカレーフィリング」を使ったカレーパンのレシピをcottaで紹介しています。揚げ、焼き、キューブ型など様々なタイプから、あなた好みのカレーパンを作ってみませんか。
3/19(金)開催! 割田シェフのライブ配信
割田シェフが「ディナービーフカレーフィリング」をアレンジした、オリジナルのカレーパン作りをcottaの公式InstagramとFacebookで生ライブ配信します。こちらもぜひお見逃しなく!
詳しくはcottaのライブ動画配信のページへ。
※ライブ配信は終了しましたが、上のリンクから配信された動画がご覧いただけます。

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