今年のクリスマスは家族みんなで北欧のごちそうをつくろう。ハーブ香るデンマーク料理「フレスケスタイ」
こんにちは!エスビー食品です。2023年もあっという間に過ぎていき、もうすぐクリスマスですね。クリスマスツリーやイルミネーションなど、街並みがクリスマス一色に染まりキラキラと輝くこの季節は、いくつになってもわくわくするものです。今年はどんなふうに過ごそうか、ごちそうやプレゼントに想いを馳せている方も多いのでは?
さて、クリスマスといえばサンタさん。サンタさんが北欧出身というのは有名ですよね。でも、そんなサンタさんの故郷・北欧では、クリスマスを一般的に「ユール」と呼ぶことはご存知でしたか?
「ユール」とは、いわば「冬至」のこと。昔のゲルマン民族は冬至の日、北欧神話の神・オーディンに豚や猪を供えており、それがいつの間にかクリスマスを指す言葉になったそうです。その名残で、北欧のユールでは七面鳥ではなく豚肉を食べるのだとか。日本や欧米のクリスマスといえばチキンのイメージが強いので、豚肉を食べるというのはなんだか不思議。人々は2カ月近く前からユールを心待ちにして、当日は親戚みんなで盛大にお祝いするそうです。想像しただけでも素敵ですよね。
今回は、そんな北欧のクリスマス文化の中でも、デンマークの伝統的ユール料理「フレスケスタイ」をご紹介! 北欧の知見を持ち、デンマーク在住の石本千智さんに、デンマークの食文化やユールの過ごし方、フレスケスタイのレシピなどについて、お話を伺います。
デンマーク料理の味付けは塩こしょうとハーブがポイント
——デンマークの食文化にはどのような特徴があるのでしょうか?
石本さん:デンマークでは、じゃがいも・ライ麦パン・パスタが主食です。お米はほとんど食べません。その代わりに、生産量が多いじゃがいもをよく食べます。他には、お魚をよく食べますね。グリルか酢漬けにしたお魚を、おかずのようにしてライ麦パンに乗せて食べることが多いです。
——お肉はどうですか?
石本さん:豚肉をよく食べます。デンマークは人口550万人に対して豚の飼育数が3000万頭と、圧倒的に豚のほうが多い国なんですよ。そのためか、伝統的な料理にもよく豚肉が使われていますね。
今回ご紹介する「フレスケスタイ」も豚肉料理。これはクリスマスのためだけの伝統料理なんですが、年中食べる豚肉料理としては「ステクト・フレスク」があります。油でカリッと揚げた豚肉に、パセリを混ぜ込んだホワイトソースをかけた料理です。これはデンマークの国民食ですね。
——おいしそう! 日本ではよく味付けにお醤油を使いますが、デンマークでよく使うスパイス&ハーブや調味料は?
石本さん:調味料は基本的に塩こしょうで、あとはローズマリーとタイムをよく使います。どちらかというと日本ではハーブやスパイスは隠し味、というイメージがありますが、デンマークでは「これでもか!」とふんだんに使うんです。だから料理を口に入れた瞬間、味わいというよりも香りのインパクトが強いですね。なのでデンマークでは、自宅の庭でローズマリーやタイムを育てている方が多いです。料理に使うとき、庭からフレッシュなものを摘んでくるんですよ。
クリスマスは親戚みんなで集まり大々的にパーティー!
——ユールの日、デンマークの人々はどのように過ごすのですか?
石本さん:12月24日の夕方に教会へ行き、賛美歌を歌ったり神父様のお話を聞いたりします。その後はおうちに戻り、家族や親戚みんなで集まってホームパーティー。ディナーの後はプレゼント交換をしたり、手をつないでデンマークの伝統的なクリスマスソング「Højt for træets grønne top(ホイ ファ トレェツ グローネ トップ)」や「Glade Jul, dejlige Jul(グラル ユール、ダイリ ユール)」などを歌いながらクリスマスツリーの周りをぐるぐる回ったりします。
25日は休日で、それぞれのおうちの中でゆっくり過ごします。26日はクリスマスランチといって、また家族や親戚で集まってランチを食べる風習がありますね。デンマーク人にとってのユールは、年に一度、親戚みんなが集まる大事な日です。
——親戚が集まるというと、まるで日本におけるお正月みたいですね。サンタさんはやっぱり12月24日にやってくるのでしょうか?
石本さん:北欧ではサンタさんのことを「ユールマン」と呼びます。赤い服に髭のイメージは日本と同じです。日本やアメリカの文化では、24日の夜に子どもたちが寝ている間にサンタさんが煙突から来ますよね。けれど北欧では、24日のパーティーの最中、親族の誰かがユールマンに変装してやってくるんです。そのおうちのお父さんだと子どもにバレてしまうので、ちょっと遠い親戚のお兄さんとかが、お腹に綿を詰めてユールマンに変装することも(笑)。
親から子へ受け継がれるクリスマス料理
——今回教えていただく「フレスケスタイ」のレシピのポイントはどんな点でしょうか。
石本さん:フレスケスタイ用の豚肉は、硬めの皮がついた大きな塊肉を使います。デンマークだとユールの時期どこのスーパーでも売っていますが、日本では皮がついた塊肉を探すのは難しいかと思うので、角煮用の豚バラブロックを使うといいでしょう。また、日本人の感覚だと「ちょっと多いかな?」と思うくらいにハーブを使うのがポイントです。
——「フレスケスタイ」は冷蔵庫で寝かせたりオーブンで焼いたり、「待つ時間」がけっこうあります。デンマークの家庭ではその時間をどのように過ごすのでしょう?
石本さん:そうですね。デンマークでは、夫婦や親子で一緒に料理をする文化があります。だから待っている間はおしゃべりをしたり、音楽を流したり、ワインやビールを飲んだり……みんなで気ままに過ごしています。基本的に「一人で料理を作る」という文化があまりないですね。デンマークの家庭では子どもの頃から親と一緒にフレスケスタイを作るので、その家庭の味が受け継がれるんですよ。
——素敵ですね! 出来上がるまでに、どのくらいの時間がかかりますか?
石本さん:豚肉をオーブンで焼いている間に付け合わせやブラウンソースを作ればいいので、下準備を除けば2時間くらいでできると思います。
フレスケスタイ(Flæskesteg)のレシピ
石本さん:デンマークの人々はフレスケスタイというと豚肉のみではなく、じゃがいもと紫キャベツのセットを想像します。カレーといったら、福神漬けが付いてくるような感覚に似ていますね。まずは、豚肉のグリルから作っていきましょう。
豚肉のグリル
【下準備】
豚肉の脂肪層に1cm幅くらいの切れ目を入れます。切れ目を入れた豚肉は塩をすり込み、容器のふたをせず冷蔵庫で24〜48時間ほど休ませましょう。長い時間寝かせると、お肉がさらに柔らかくなります。時間がない場合はこの工程を省いても大丈夫です。
【1】予熱
オーブンを200度に温めておきます。下準備をしなかった場合は、このタイミングで豚肉の脂肪層に1cm幅くらいの切れ目を入れましょう。
【2】塩とハーブで味付け
全体にたっぷり塩をすり込み、切れ目の間にも塩を入れます。ローズマリーをたっぷりかけて、切れ目にローレルを差します。ローレルは豚肉の下に敷いてもOKです。
【3】オーブンで焼く
オーブンの天板に2.5cmほど水を注ぎ、グリル網の下にセットします。オーブンの温度は約220度が目安です。豚肉の内部温度が約60度に達するまで、約30分~1時間かけてオーブンで焼きます。焼いている間、天板の水がなくならないように、適宜水を追加してください。
【4】できあがり
豚肉の表面がカリカリになったのを確認したら、オーブンから取り出し、15分ほど休ませます。その後、挟んでいたローレルをお肉の間から取り出し、最初に入れた切れ目に沿って豚肉をスライスします。
紫キャベツの付け合わせ
石本さん:紫キャベツの付け合わせは、オレンジジュースやリンゴ酢が入っていて甘酸っぱいので、さっぱりと食べられます。豚肉の箸休めにぴったりですよ。
【1】紫キャベツを切る
紫キャベツを千切りにします。
【2】バターと混ぜる
鍋に紫キャベツとバターを入れて中火にかけ、数分ほど混ぜます。
【3】調味料を加えて煮込む
鍋にリンゴ酢、オレンジジュース、タイム、ローレル、シナモンスティック、バニラパウダーを加えます。そのまま弱火で30分ほど煮込みましょう。
【4】仕上げ
最後にはちみつ、ベリージャム、塩こしょうを加えて混ぜたらできあがり!
じゃがいもとブラウンソース
石本さん:最後にじゃがいもを茹で、同時にブラウンソースを作っていきます。ブラウンソースは、とんかつソースをやや薄くしたような味で、生クリームが入っているためまろやか。豚肉とじゃがいもにかけて食べるので、美味しいけれどけっこう重めに感じるかもしれません。
【1】じゃがいもを茹でる
鍋に皮付きのじゃがいもを丸ごと入れ、かぶるくらいの水を入れます。そのまま、じゃがいもが柔らかくなるまで茹でましょう。これでじゃがいもの付け合わせはできあがり!
【2】ブラウンソースを作りはじめる
別の鍋に油と先ほどのじゃがいもの茹で汁を入れ、中火にかけます。片栗粉を少しずつ加えて木べらでよく溶けるまでかき混ぜましょう。
【3】調味料を加える
鍋に生クリーム、ウスターソースを加えます。ちょっと味が薄いなと感じたら塩こしょうで味を調えましょう。そのまま1〜2分ほど煮たら完成! 豚肉とじゃがいもにソースをかけていただきます。
北欧の冬は日が短いからこそ、おうちの中を心地よく
デンマーク語には「居心地のよい空間」や「楽しい時間」を指すヒュッゲという言葉があります。「デンマークは日照時間が短く、とても寒い国。おうちの中で過ごす時間が長いからこそ、ヒュッゲを大切にしているんです」と石本さん。
今年のクリスマスは、家族でおしゃべりをしながらフレスケスタイを作ってみては? 音楽を流したりお酒を飲んだり、ワイワイ楽しみながらクリスマスの準備をすることで、より温かな気持ちを味わえることでしょう。
文:吉玉サキ
写真提供:石本千智
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