いつものコーヒーがスパイスで変わる! 秋にぴったりなカフェレシピも
ちょっぴり涼しくなり、ホットコーヒーが恋しい季節になりました。いつものようにコーヒーを淹れるのもいいですが、今年は「スパイスコーヒー」にチャレンジしてみませんか?
今回はスパイス×コーヒーの可能性を探るべく、スペシャルティコーヒーにこだわる「THE COFFEESHOP」店長の萩原大智さんに協力を依頼。
「スパイスとコーヒーの可能性は無限大! どの組み合わせが好みか、いろいろ模索するのも楽しいですよ」と萩原さん。スパイスコーヒー初心者に向けたお試しレシピから、一風変わったダーティチャイ風オレのレシピまでご紹介しているので、ぜひ最後までチェックしてください。
親和性が高いスパイスとコーヒー。組み合わせのポイントは?
インドやモロッコなど、コーヒーにスパイスを入れて楽しむ国がある一方で、スパイスコーヒーにはまだなじみがない日本。スパイスコーヒーを試してみたいと思っても、ハードルが高いかもしれませんね。まずはどんな風に組み合わせを選べばいいか、萩原さんに聞いてみました。
萩原さん:実は、スパイスコーヒーを試すのは、僕も今回が初めてなんです(笑)。でもいろいろ試してみるうちに、コーヒーとスパイスって意外と似ているところが多いなと気付きました。世界各国でスパイスコーヒーが根づいているだけあって、もともと相性がいいのでしょう。突き詰めたら切りがないくらい、組み合わせは無限大にありそうな気がします。
——おぉ! コーヒーとスパイスって奥が深そうですね。実際に組み合わせを考える時、どんな基準で選びましたか?
萩原さん:フードペアリングと一緒で、まずは香りや風味が近いものを試しました。例えば、フルーティーなコーヒーと清涼感のあるスパイスは合わせやすいです。香りや風味のベクトルを合わせると外れにくいイメージですね。
——印象の近いコーヒーとスパイスと合わせると、味がまとまりやすいんですね!
萩原さん:そうですね。逆に深煎りのようなパンチのあるコーヒーには、刺激的な風味のスパイスを合わせてもおもしろいと思いますよ。ただ、好みにもよりますが、レッドペッパーのように辛すぎるスパイスは合わせるのが難しいかもしれません。
——コーヒーの良さを損なわないような組み合わせを考えるのが大事ですね。
萩原さん:あと、気を付けていただきたいのがスパイスの「量」です。あまりたくさんスパイスを入れてしまうと香りが強く出すぎて、コーヒーの良さが消えてしまいます。コーヒーとスパイス、両方の魅力が引き立てられるような分量を見極めるのが大切。チャレンジする時は少量から試しましょう。
——スパイスの分量がレシピのポイントになりそうですね。今回は具体的に、どんなレシピを考えてくださったんですか?
萩原さん:誰でも簡単に再現できる、パウダースパイスを使ったレシピを考えました。ホールスパイスを自分で砕いてもいいのですが、パウダースパイスの方が量を調整しやすいので便利です。基本的な作り方は、コーヒーをハンドドリップする際に、コーヒーの粉の上にパウダーを振りかけて一緒に抽出するだけ。ドリップしたコーヒーに後からスパイスを振りかけるより、味がなじみやすく、おいしく仕上がります。
——わぁ、思ったより簡単でびっくりしました!
萩原さん:手軽なので、いつものコーヒーのニュアンスを変えたい時に気軽にチャレンジできると思います。今回は基本の作り方として、浅煎りと深煎りのコーヒー豆でお試しレシピを考えました。特に浅煎りのコーヒーは香りや味の個性が出やすい分、スパイスの組み合わせが難しいので、まずはこのレシピで試してみてください。
一方で深煎りのコーヒーは、日本人が飲み慣れている上、スパイスの風味に負けない味わいの強さが特徴です。初心者の方はこちらのレシピから始めて、自分なりの組み合わせをいろいろ考えてみてもいいでしょう。
——一体どんな味わいになるのかワクワクしてきました! さっそくレシピを教えてください!
お試しレシピ1:浅煎りコーヒー×カルダモン
萩原さん:今回使う「エチオピア・ウォッシュド」というコーヒー豆は、シトラス系の風味が特徴です。ここに、ほのかな甘さと爽やかな香りを持つカルダモンを加えることで、より清涼感が増してすっきりと飲めます。
——エチオピア・ウォッシュドの良さをさらに引き立てるような組み合わせですね。
萩原さん:そうですね。さらにスパイスによって香りが複雑になると、コーヒー本来の甘さが引き立てられ、ほっと心が安らぐような味わいになります。軽やかな口当たりで、朝の目覚めやひと息つきたい時にもぴったりです。パウンドケーキのような焼き菓子にもよく合いますよ。
【1】
コーヒー豆を中挽きにします。
【2】
コーヒードリッパーにフィルターをセッティングし、1で中挽きにしたコーヒー粉末を18g入れます。
萩原さん:あらかじめコーヒードリッパーとコーヒーサーバーにお湯を通して温めておくと、抽出したコーヒーの温度が下がらず、フィルターの紙の臭いも落とせるので、よりおいしいコーヒーを淹れることができます。ささやかな工程に思えますが、このひと手間でコーヒーは格段においしくなるんです。
【3】
カルダモンをひと振り入れます。
——想像していたよりも少量ですね! こんなに少なくていいんですか?
萩原さん:はい、このぐらいの量でもスパイスの風味はしっかり出ますよ。
【4】
お湯を90〜92℃くらいに温めます。
——お湯の温度も重要なんですね。
萩原さん:お湯が熱いほどコーヒーの味がよく出ますが、特にハンドドリップの場合は、沸騰したばかりのお湯を使うと雑味も抽出されやすくなるんです。コーヒーをおいしく淹れるには、温度をしっかり測ることが大切。初心者の方でも簡単においしいコーヒーが淹れられる「V60」というドリッパーを使ったハンドドリップの手順を紹介するので、ぜひ試してみてください。
タイマーをスタートすると同時に、以下の手順に従ってお湯を注いでいきます。
ステップ1:0〜15秒 60gのお湯を粉全体に行き渡らせるように注ぎ、タイマーが40秒になるまで蒸らします。
ステップ2:40〜55秒 続いて80gのお湯を注ぎます。
ステップ3:1分5〜20秒 90gのお湯を注ぎます。
ステップ4:1分30〜40秒 最後に70gのお湯を注ぎ、ドリッパーからお湯が落ちきるのを待ちます。
——わぁ! お湯を注ぐと香りが一気に広がりますね!
萩原さん:コーヒーは味わいだけでなく、淹れている間の香りを楽しめるのも魅力。スパイスを加えるとより香りが強まって、至福のひとときが過ごせます。この香りの心地良さも、スパイスコーヒーの醍醐味かもしれませんね。
【5】
2分15〜30秒くらいを目安に、コーヒーがすべて落ち切ったらドリッパーを外します。コーヒー全体をなじませるように軽くかき混ぜたら完成です。
【6】
カップに顔を近づけると、……なんて爽やかな香り! ひと口飲むと、コーヒー本来のシトラスの香りと一緒に、カルダモンの清涼感が鼻を抜けていきます。カルダモンの風味で軽やかさが増し、酸味のあるコーヒーとの相乗効果で、よりすっきりとした口当たりに。気分がリフレッシュする味わいです。
お試しレシピ2:深煎りコーヒー×オールスパイス
萩原さん:当店の定番ブレンドでもある「Dark Mix」は、ブラジルとホンジュラスの深煎りを合わせたもの。チョコレートやキャラメルのような甘さが長く続くのが特徴です。ここにオールスパイスをプラスすると、この余韻をキリッと引き締めてくれて、さっぱりとしたアフターテイストに変えてくれます。
——先ほどのレシピとは、スパイスの効いてくるタイミングが異なるのがおもしろいですね。
萩原さん:確かに、カルダモンは飲んだ瞬間にその存在を感じますが、辛味のあるオールスパイスは飲み込んだ後にいい仕事をしてくれます。香りのバランスもちょうどよく、深煎りコーヒーの香ばしい風味となじみやすいのも特徴。オールスパイスはコーヒーに合いやすいスパイスの一つなので、スパイスコーヒー初心者の方におすすめですよ。
手順【1】と【2】は、「浅煎り×カルダモン」のレシピと同じです。
【3】
オールスパイスをひと振り入れます。
——こちらもけっこう少なめに入れるのがポイントですね。
萩原さん:はい、でもカルダモンほど神経質にならなくても大丈夫ですよ。深煎りのコーヒーは味わいがしっかりしているので、多少スパイスを入れすぎても、味のバランスが崩れにくい傾向があります。おおらかな気持ちで作れるのもこのレシピのいいところです。
【4】
お湯を86〜88℃くらいに温めます。「浅煎り×カルダモン」のレシピと同じ手順でお湯を注ぎます。
ステップ1:0〜15秒 60gのお湯を粉全体に行き渡らせるように注ぎ、タイマーが40秒になるまで蒸らします。
ステップ2:40〜55秒 続いて80gのお湯を注ぎます。
ステップ3:1分5〜20秒 90gのお湯を注ぎます。
ステップ4:1分30〜40秒 最後に70gのお湯を注ぎ、ドリッパーからお湯が落ちきるのを待ちます。
萩原さん:浅煎りに比べて味が出やすいので、お湯の温度を低めに設定しましょう。お湯を注いでいる間は、ぜひオールスパイスの複雑な香りと、コーヒーの豊かな香りのハーモニーをじっくり楽しんで。
【5】
2分15~30秒くらいを目安に、コーヒーが落ち切ったらドリッパーを外して全体をなじませるように軽くかき混ぜたら完成です。
飲んでみると、苦味・甘み・コクのある力強い味わいのコーヒーが、オールスパイスの風味で驚くほどシャープな印象に! より飲みやすさが増したように感じます。余韻が長引かない澄んだ味わいで、ブレイクタイムにぴったりの一杯です。
チャレンジレシピ:おうちで簡単!ダーティーチャイ風スパイスオレ
萩原さん:ダーティチャイとは、チャイミルクティーに深煎りのエスプレッソを追加したドリンク。アメリカの一部地域で密かに人気となっているんです。今回はご自宅でも試しやすいように、エスプレッソを使わないカフェオレ風アレンジレシピを作りました。フレンチプレスを使って抽出したコーヒーに、スパイスを溶かしたミルクを合わせるだけなので簡単ですよ。
——フレンチプレスを使うメリットはどんなところですか?
萩原さん:コーヒーの油分が抽出できるので、より風味と香りが豊かに、口当たりもなめらかになりますよ。フレンチプレスは誰が使ってもコーヒーをおいしく抽出できるので、コーヒー初心者の方におすすめしています。ハンドドリップに比べ、そこまでお湯の温度に神経質にならなくても大丈夫ですし、お湯を入れて4分待つだけと手軽です。ただペーパーフィルターに比べて、フレンチプレスのメッシュフィルターは目が粗めなので、コーヒー豆は粗挽きにしてくださいね。
【1】
小鍋に牛乳120gとオールスパイス・カルダモン・ヒハツ入れ、沸騰させないように弱火で温めます。
萩原さん:よりエキゾチックな味わいにしたいので、先に紹介したお試しレシピよりもスパイスを多めに入れます。それでもスパイス感を控えめにしたレシピなので、物足りない人は好みに合わせて追加してみてくださいね。
【2】
フレンチプレス本体にお湯を通して余熱した後、粗挽きにしたコーヒーの粉末18gを入れます。
【3】
4分間のカウントダウンでタイマーをセットし、スタートすると同時に以下のステップでお湯を注いでいきます。
ステップ1:0〜15秒 150gのお湯を粉全体に行き渡らせるように注ぎ、30秒まで蒸らします。
ステップ2:30〜45秒 残りのお湯150gを注ぎ、軽く蓋をしてそのまま待ちます。
ステップ3:タイマーが鳴ったら、プランジャー(フィルター)をゆっくりと押し下げます。
萩原さん:プランジャーは、強く押し下げるとコーヒーの雑味もぎゅっと出てしまうので、“ゆっくり丁寧に”下げるのがポイントです。
【4】
コーヒーができあがる少し前に、牛乳にチャツネを加えて溶かしておきます。
【5】
コーヒー210g程度に、スパイス入りのミルクを全て加えて完成です。
ひと口飲むと、口の中に広がるスパイス感! まるで紅茶のような爽やかさです。コーヒーの苦味に、スパイスの華やかな香りがよくマッチしていて、深い味わいが表現されています。チャイもコーヒーも好きな人には、ぜひ試してみてほしい味わいでした!
最後に、「コーヒーは、リラックスしたい時にもシャキッと覚醒したい時にも飲みますが、スパイスを組み合わせることで、ぐっと気分を盛り上げられるのもおもしろいですね」と萩原さん。
ほんの少量でも、コーヒーのニュアンスを変えてくれるスパイスの存在感。シーンや気分に合わせて、いろいろな組み合わせにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
レシピ・監修:萩原大智/文:大瀧亜友美/撮影:上原未嗣
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