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毎日食べ続けて8年、カレー愛食家が語るスパイス収納術「スパイスは飾るものではなく使うもの」──福岡裕介さん

今年も残すところあとわずかとなりました。
年越しといえば大掃除、大掃除といえば調味料の断捨離です。何かの機会に買ったままキッチンに眠るスパイス&ハーブたちの悲しい声が聞こえてくるようです、「マダ…捨テナイデ…」。ぜひ使いやすく整頓して、楽しく活用していただきたい。そんな想いから、スパイスを愛する方に収納のコツを伺うことにしました。聞き手は、阿部光平さんです。


インドで生まれ、遠く離れた日本で独自の変化を遂げたカレー。今や日本の国民食といっても過言ではない、定番家庭料理のひとつです。

そんなカレーを毎日食べ続けているというのが、今回お話を伺った福岡裕介さん。なんと福岡さんは、8年間一日も欠かすことなくカレーを食べているといいます。

カレーを食べ続けているうちにスパイスの魅力にハマり、自らも料理をするようになったという福岡さんに、飽きることのないカレーの多様性や、調理法によって変化する味わいの奥深さ、ご家庭でのスパイス収納術などについて伺いました。

登場する人:福岡裕介さん
毎日カレーを食べ続けて8年のカレー愛食家。その数は3000食を超える。国内、インド、スリランカ、東南アジア諸国を行き来し、日本と世界の食文化を探求している。SARAH JAPAN MENU AWARD カレー部門審査員。「連続カレー三兄弟」次男。雑誌Pen「365日カレー天国。」、TBS「マツコの知らない世界」、日本テレビ「news every. 密着!食べ歩きの極め人」などイベント企画やメディア出演で活躍。
Instagram:@fuku_stgrm

ある日、「このままカレーを食べ続けたら面白いかも」

——福岡さんは、毎日カレーを食べ続けて8年になるそうですね。

福岡:はい。来年の1月17日で丸8年になります。

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福岡さんのご自宅に向かう途中、道に迷ってしまった我々を優しい笑顔でわざわざ迎えにきてくださいました

——スタートした日も、ちゃんと覚えてるんですね!

福岡:記念日みたいなものなので(笑)。だけど、実は毎日カレーを食べる生活をするのは、今回で3回目なんです。

——ということは、今までに2回途切れているんですか?

福岡:そうなんです。カレーの面白さに目覚めたのは、前の会社の同僚だったインド人のプログラマーと出会ったことがきっかけだったんです。

その会社にはインド出身のプログラマーが3人いたんですけど、みんなベジタリアンだったこともあって、自分たちでカレーのお弁当を作ってきてたんですよね。
 
——野菜のカレーを。
 
福岡:そう、そう。それで僕もカレーが好きだったし、彼らと仲良くなりたくて野菜のカレーを作って持って行くようになったんです。そのカレーを彼らに食べてもらったら、「美味しい!」って言ってくれて。

そうやって仲良くなっていくうちに、いろんなスパイスを分けてもらうようになって、だんだんとカレーの魅力にのめり込んでいきました。それまではカレーをひとつのメニューという枠でしか捉えてなかったんですけど、自分で作るようになると、だんだんスパイスのことが面白くなってきたんですよね。
 
——カレーを見る目が変わってきたんですね。

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福岡:それからは好きでよくカレーを食べてたんですけど、最初に毎日カレーを食べる生活を始めたのは10年ほど前で。

 ——それは何がきっかけだったのでしょうか?
 
福岡:なんてことはないんですけど、ある日たまたま家でカレーを作ったのがきっかけで。

カレーのルウって、だいたい1箱が10皿分の分量になってるじゃないですか。それを大きな鍋で作って、しばらくは毎食カレーだったんですよね。
 
——カレーって、一回作るとしばらく続きますもんね。
 
福岡:一人暮らしだと余計に。それで、作ったカレーがちょうど食べ終わった頃に実家から荷物が届いて、その中に大量のカレーが入っていたんです。

そのときにハッとしたんですよね。「このままカレーを食べ続けたら面白いかも…」って。
 
——はぁー、そういうきっかけだったんですか(笑)。
 
福岡:最初は、そんな感じでした(笑)。だけど、1回目は1ヶ月くらいで途切れちゃったんですよね。

で、またしばらくして毎日カレーを食べ始めたんですけど、その途中で社員旅行があって。行き先がグアムだったんです。

——グアム…。カレーがあるどうか怪しいところですね(笑)。

福岡:ホテルに泊まるから大丈夫だろうと思ってたら、カレーがなくて(笑)。2回目の連続カレーは、そこで止まっちゃいました。

——毎日同じものを食べるって、そういうハードルもあるんですね。

福岡:そうなんですよ。だから、今は旅行へ行くときには、必ずレトルトかフリーズドライのカレーを持っていくようにしてますね(笑)。

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福岡:3回目を始めた頃は、前よりもカレーが好きになっていたので、よく美味しいお店を探して食べに行ってました。お店で食べたカレーを、どうやったら再現できるのかを考えたりもしてて。

そういうことをしていると、ホームパーティで人の家に集まるときにカレーを期待されるんですよ。

——周りからもカレーの人として認知されてるから(笑)。

福岡:そうなんです。それで、レシピの本を買ってきて、勉強するようにもなりました。そうやって自分なりに工夫して作るようになると、お店で食べたときに「あー、こういうことだったんだ」っていうのがわかるようになってくるんですよね。

——カレーの構造みたいなことがですか?

福岡:そうです、そうです。自分のカレーのどこが良くないとか、こうしたらもっと美味しくなりそうとか、そういう気づきがあるので、ますます面白くなってきたんですよね。

——自分で作るようになったことで知覚できる領域が広がって、それによって他所との違いが見えるようになってきたんですね。

「一生かけてもカレーを極めるなんて無理」。“組み合わせ×調理法”で広がる無限の可能性

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——8年間も毎日カレーを食べ続けていて、飽きることはないですか?

福岡:飽きることはないですね。カレーって、すごく幅が広くて。たぶん、「カレー」という言葉を聞いて思い浮かべるものって、みんなそれぞれ違うと思うんですよ。

——あぁ、確かに。欧風カレーだったり、インドカレーだったり、それぞれで違いがあるかもしれません。

福岡:いろいろと食べてみてわかったんですけど、カレーって地域ごとにかなり違うんですよ。例えば、スリランカとインドは近くの国だけど、カレーはまったく別の美味しさがあって。

——それって、使用しているスパイスの違いなんですか?

福岡:スパイスは同じようなものを使っているんですけど、大きな違いは出汁とハーブですね。スリランカのカレーは、モルジブフィッシュという、鰹節みたいなものを出汁として使うことが多いんです。これは島国だからこそ生まれた食文化だと思うんですけど、あるのとないのではまったく別物のカレーになります。あとはパンダンリーフというハーブもよく使われていて、これが入ることでインドのカレーとは異なる味わいになるんですよね。

そういう地域性が国別にはもちろん、インド国内だけでも本当に多種多様なんです。標高が高くて雪の降る地域や、暑くて乾燥した砂漠地帯、ジャングルなんかもあって、それぞれに食文化が異なるので。だから、カレーって本当に果てしないんですよ。カレーを極めるなんて、自分の一生をかけても無理な話だなと思っています。

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こちらがモルジブフィッシュ。モルジブ産の鰹節の一種で、スリランカ料理には欠かせない存在。日本の鰹節との違いはカビ付けがされないこと

——カレーの果てしなさって、食材やスパイスの組み合わせによるものなんですか? それとも常に新しいスパイスが誕生してたりもするのでしょうか?

福岡:新種のスパイスが出てくるというのはあまりないですね。世の中で流通しているものは、日本でもある程度は手に入ります。

だけど、スパイスって、使い方によって味や香りが変わるんですよ。例えば、油で熱すると100℃以上になるし、水で茹でると100℃までしか上がらない。それによって味や香りが大きく違ってきます。

——はぁ、なるほど。組み合わせだけでなく、調理法によっても違いが出るか。

福岡:その違いって、作れば作るほどわかってくるんですよね。そうすると、自分の中の常識が一気に崩れて、そこからまた再構築することになったりするので、どこまでいっても終わりがないんです。

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福岡:それに、カレーって変遷も面白くて。

——カレーの変遷…ですか?

福岡:仏教の伝来とも似てるんですけど、カレーってインドで生まれて、日本で独自のものに変化してるじゃないですか。そういう変遷の過程が、カレーの地域性を通じて見えてくることがあるんですよね。

——なんか民俗学みたいな話ですね。

福岡:まさに、そんな感じです(笑)。以前、中国料理屋でマカオのカレーを食べたんですけど、ココナッツミルクが使われていたんですよね。マカオって、昔はポルトガル領だったじゃないですか。つまり、大航海時代にポルトガル人が、インドからスパイスを持ち込んだんです。

で、ココナッツはマカオではとれないんですけど、それが使われているということは、同じように外国から船で入ってきた食文化なんだろうと。そういう変遷が、カレーの地域性から見えてきたりするんですよね。

——はぁ、面白いですね。そう考えると、カレーを突き詰めるというのは、単に料理だけの話ではないんですね。その国の歴史や文化が融合した上に、カレーという食べ物が存在しているというか。

福岡:そうなんですよ。だから、掘っても掘っても、先にはまだまだ体験したことのない何かがあるので興味は尽きませんね。カレーやスパイスって、本当に奥が深い世界だなと思っています。

スパイスは飾るものではなく使うもの、「ストック」と「利便性」を分けた収納術

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——ちなみに今、ご自宅には何種類くらいのスパイスがあるんですか?

福岡:数えてみたら、62種類ありました。ただ、同じスパイスでもホール(原形)のものと、パウダー(粉状)にしたものなどがあって、それぞれ使い方が異なるので別物としてカウントしています。

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——それだけたくさんの種類や形状があると、保管方法も変わってくるのでしょうか?

福岡:いや、基本的には一緒ですね。「日光に当てない」「湿気を避ける」「高温になるところに置かない」という3点を守っていれば大丈夫だと思います。

ただ、ホールスパイスに比べて、パウダースパイスは香りが飛びやすいので、なるべく早めに使うようにはしています。

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福岡:ストックしているスパイスはキッチンの裏にある収納スペースで、ホールやパウダーごとの箱に分けて保管していています。それに対し、使う分は個別に瓶詰めしていて、中身がなくなったらストックから詰め替える感じですね。上から見ても中身がわかるように、ラベリングもしてあります。

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カスリメティ。甘い香りとほろ苦い風味が特徴のフェヌグリークの葉。スパイスカレーのトッピングやエスニック料理の風味づけに使われます

——個別の容器はプラスチック製のものですね。

福岡:そうですね。容器はガラスでもステンレスでも問題ありませんが、料理をするときに持ち出したり、動かしたりするので、僕は軽くて丈夫で中身が見えるプラスチック製のものを選んでいます。

これは100円ショップで売ってるものなんですけど、容器を統一しておくとスッキリ収納できるので、使うときにも便利ですね。

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福岡:容器に関しては、口の広さが重要だと思います。特にカレーを作る場合、スパイスを計量して使うので、小さじが入らないと不便なんですよね。だから瓶で売られているものは、容器を移した方がずっと使いやすくなります。

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スターアニス(八角)。かわいい星型をしていて、特に中国で豚肉料理や鴨料理などの香りづけに多用されます。漢方として胃弱やかぜ薬に、香料として歯みがきや石けんにも。果実を乾燥させたものですが、これもまたスパイスなんです

福岡:タッパーに入っているものは、グラム数ではなく、個数で使うものなので、つまみやすいように、この容器を選びました。

——保管方法と同じように、使いやすさも重要なんですね。

福岡:コレクションなら綺麗に見えればいいですけど、スパイスは見るものでも、飾るものでもなく、使うものなので。使い勝手は大切にしていますね。

だから、瓶詰めした方のスパイスは簡単に動かせるようにキャスター付きのワゴンに乗せてあります。

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福岡:1段目はホールスパイス、2段目はパウダースパイス、3段目は豆類という感じに分けてあります。以前は袋を引っ張り出してきて、そこから計量して使ってたんですけど、やっぱり出し入れが面倒で。

キャスター付きのワゴンを導入してからは、料理する際の導線もすごくスムーズになりました。ストックとしての収納と、使いやすさを考えた収納の2つに分けておくと、料理をするのがかなり快適になるのでオススメです!

取材を終えて

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取材後、なんと福岡さんがお手製のカレーを振舞ってくださいました。

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この日いただいたのは、南インドのチェティナードチキンカレー、ラッサムという辛いスープ、レンズ豆のカレー、舞茸のポリヤル(スパイス炒め)、ご飯はインディカ米と日本のお米のミックスという組み合わせ。

ひとつひとつの特徴を(地図を用いながら)解説していただいたおかげで、それぞれのスパイスをしっかり感じることができて、カレーに対する解像度がグンっと上がる体験でした。



知れば知るほど奥が深いカレーとスパイスの世界。
まずはご自宅から、その扉を叩いてみませんか?



取材・文:阿部光平/撮影:藤原慶 /編集:エスビー食品note

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