【大人の自由研究】この夏はクラフトビール×スパイスの魅惑のペアリングを探そう
今年もビールのおいしい季節がやってきました。暑さで火照った体に冷たいビールをぐいっと流し込む瞬間は、最高のご褒美タイムですよね。そんなビールをより楽しむなら、つくり手のこだわりがぎゅっと詰まったクラフトビールがおすすめ! 実はスパイス料理とも相性がよいことを知っていましたか?
今回は自家製ビールとスパイス料理が楽しめるブリューパブ「アンドビール高円寺タップルーム」を営む安藤耕史さん・祐理子さんご夫妻に、クラフトビールの魅力やスパイス料理とのペアリングについて教えてもらいました。
「クラフトビールもスパイスと同様、奥深いもの。可能性は無限大で、組み合わせると未知のおいしさに出会えますよ。ぜひ自分の好きな組み合わせを探してみてください」と安藤耕史さん。
どんなおいしさの相乗効果が生まれるのか、ワクワクしてきましたね。さぁ、この夏を楽しむための大人の自由研究を始めましょう!
クラフトビールとスパイスの意外な共通点とは?
ここ最近ブームとなっているクラフトビール。しかしその定義がいまいちわかっていない人も多いのではないでしょうか? まずはクラフトビールの基本情報やその魅力について尋ねてみました。
安藤祐理子さん(以下、祐理子さん):クラフトビールとは、一般的に小規模の醸造所(マイクロブルワリー)で造られた個性豊かなビールのことを指します。大手ビール会社など大規模な醸造所と対比するものとして生まれたのが始まりみたいですね。小規模だからこそ小ロットでトライ&エラーがしやすい点がメリットで、醸造家(ブルワー)の個性が際立つ多種多様なクラフトビールが生まれています。
安藤耕史さん(以下、耕史さん):日本では、1994年の酒税法改正で年間の最低製造量が大きく引き下げられたことをきっかけに、小規模メーカーが参入しやすくなったようです。ここ数年で中央線のエリアにもマイクロブルワリーがどんどん増えています。どのブルワリーも味わいの異なる個性的なビール造りにチャレンジしていて、とても興味深いんですよ。
アンドビールさんも小規模の良さを活かして、常に新しいビール造りに挑戦しているブルワリーのひとつ。クラフトビールのビアスタイルの違いについて、醸造家の目線から教えていただきました。
耕史さん:ビール業界が決めているビアスタイルは、伝統的なものから新しいものまで約200種類近くあるようです。そのなかでビアスタイルをわけるのは度数、苦味、色味、副原料など。たとえばホップを多く入れて苦味を強めたビールは「IPA」と呼ばれます。麦さえ使っていれば、ほかにどんな素材を使用してもクラフトビールと名乗れるのがおもしろいところです。
祐理子さん:私たちも「飲む人に驚きと感動を与えたい」という思いがあり、紀州産の梅や小田原産の柑橘類などさまざまな素材を試しながらビールを造っています。いま新たにチャレンジしているのは、バレルエイジドビール。木樽で熟成させて造るビアスタイルのことですが、私たちは山梨県勝沼でワインの木樽を使って製造を進めています。熟成するほど木の香りが移り、まろやかな味わいが楽しめる。まるで、ビールとワインの中間のようなクラフトビールなんです。
お話を聞けば聞くほど、無限の可能性があるように思えるクラフトビール。なんとスパイスにも共通点があると言うのです。
耕史さん:スパイス料理とクラフトビールは製造工程や材料の自由度が似ているなと感じています。どちらも素材を入れるタイミングで風味の強さが変わりますし、たとえばカレーも和風だしを入れて作ってもおいしいですよね。組み合わせを考え、狙った味わいを目指して作る感覚は、クラフトビールに近いものがあります。飲むたび、食べるたびに新しい発見のあるクラフトビールとスパイスを組み合わせることで、予想を超えたおいしさを体験できるのではないかと思います!
ハマったら抜け出せなさそうなほど深い魅力を持ったクラフトビールとスパイス。ぜひその世界をのぞいてみたくなりましたね。今回はペアリングの例として、簡単にできるスパイス料理とおすすめのクラフトビールを教えていただきました。さっそくチャレンジしてみましょう!
1. 苦味が決め手の「IPA」×ピリッと辛い「チキン65」
ひと皿目は、南インドの料理「チキン65」。アンドビールの定番料理でもあるそうです。香辛料をたっぷりまとわせたスパイシーなチキンは、苦味のパンチが効いた「IPA」と相性抜群!
安藤さん:よりガツンとインパクトのある組み合わせを楽しみたい人は、IPAから進化したビアスタイル「WIPA」もおすすめ! モルトの風味がさらに効いた力強い一杯が、スパイスの辛さに負けず、お互いの良さを引き出し合います。「チキン65」は、鶏もも肉を砂肝や軟骨などに変えると、さらにおつまみ感が増しますよ。
【1】ソースを作る
浅めの鍋にサラダ油大さじ1を入れ、クミンシードがしゅわしゅわと音を立てるまで炒めます。次にみじん切りにしたにんにくと生姜、薄切りにした青唐辛子を投入。ダイス状にカットしたトマトを加え、果肉をつぶすように炒めます。
トマトがペースト状になったら、チリパウダー・パプリカパウダー・ターメリックパウダーを加え、塩と砂糖で味を整えます。
安藤さん:クミンシードを最初にしっかりテンパリングすることが大事。この過程で油に風味が移り、料理全体にクミンシードの風味をまとわすことができます。パウダーのスパイスはソースにとろみをつける役割も。
【2】鶏もも肉を焼く
30g程度ずつにカットした鶏もも肉に、塩こしょうで下味をつけます。片栗粉をまぶし、大さじ2のサラダ油を引いたフライパンで焼いていきます。目安は皮目を下にして5分、裏返して2分です。火を止めて5分ほど休ませて中まで火を通したら再度加熱し、1のソースと絡めたら完成です。
2. ハーブ&スパイスの「セゾン」×「オレガノ香る夏野菜の焼き浸し」
続いてはさっぱりとしたおいしさで、夏にもってこいの焼き浸し。ズッキーニやナスなどの夏野菜を使って、旬のおいしさを味わいましょう。合わせるビアスタイルは、ハーブとスパイスが複雑に絡み合う「セゾン」です。
安藤さん:「セゾン」はセゾン酵母を使って造られたビアスタイル。かつて農場で働く人たちが水分補給に飲んでいたベルギー生まれのビールで、さらりとした軽めの味わいが一般的です。ハーブを感じさせる華やかな風味が、オレガノを効かせた焼き浸しに寄り添うようにマッチします。
このオレガノの焼き浸しは、2023年5月にオープンした姉妹店「olla」の提案メニューなのだとか。こちらはメキシカンタコスと山梨ワイン&ビールのお店で、ワイン樽で熟成させるクラフトビール・バレルエイジドビールも楽しめるそう。
【1】マリネ液を作る
ボールにマリネ液の材料をすべて入れ、混ぜ合わせます。赤唐辛子は種ごと入れましょう。辛いのが苦手な人は、種を抜いてください。
【2】野菜をカットして炒める
野菜をひと口大にカットして、オリーブオイル大さじ1をしいたフライパンで炒めます。片面に焼き色がつくまで炒めたら、塩で下味をつけひっくり返します。反対側にも焼き色がつくまで炒め、火を止め少し休ませます。
安藤さん:今回使用した夏野菜は生でも食べられるので、軽く焼き目がつく程度で大丈夫。表面に火が通ったら、中もやわらかくなっているはずです。
【3】マリネ液と絡める
フライパンにオリーブオイル(分量外)を引いて、みじん切りにしたにんにくを炒めます。にんにくに火が通ったら、マリネ液を加え、白ワインのアルコールを飛ばします。最後に2の野菜を投入しマリネ液を軽く煮詰め、写真ぐらいまで汁気がなくなったら完成。
3. 軽やかな「ベルジャン」×「締め鯖の青いソース」
3品目は青唐辛子の辛味と旨み、大葉の爽やかさが香る特製のソースが決め手! アンドビールでも人気のこのソースを、締め鯖にたっぷりかけていただきます。おすすめのペアリングは、なんとフルーツビール!
安藤さん:爽やかなソースには、フルーツの華やかさがよく合います。ブドウや桃を使ったフルーティなビールを合わせてみましょう。魚に白ワインが合うように、小麦を使った白ビールもおすすめです。軽めの味わいの「ベルジャン」は独特なスパイシー感があり、山椒の実を効かせたスパイシーなソースによく合います。
【1】材料をカットする
締め鯖はスライスし、バーナーで軽く炙ります。玉ねぎは薄切りにして水でもんでおきます。
【2】ソースを作り、盛り付ける
大葉・小口ネギ・青唐辛子・山椒の実を刻み、サラダ油・塩と混ぜ合わせます。お皿に玉ねぎをしき、上に締め鯖をのせたら、ソースをたっぷりかけて完成です。
安藤さん:山椒の実は、ミルで砕いてもいいですが、より香りを引き出すなら包丁で刻むのがおすすめです。まず包丁の腹でつぶしてから刻むと、飛び散りにくいですよ。フードプロセッサーやミキサーをお持ちの方は、ソースの材料を一気に入れてペースト状にする方法が一番手軽です。
探求心をくすぐるクラフトビール×スパイス料理
「さっぱりとした味わいには爽やかで軽いビール、強い味付けの料理にはパンチのあるビールなど、基本的なペアリングと同じ考えで合わせるとよいでしょう。何より楽しみながら味わうことが大事なので、いろいろな組み合わせを試してみてください」と安藤さん。
奥が深くて、探求しがいのあるクラフトビールとスパイス料理。「次はハーブをたっぷり使った魚の香草焼きに、白ビールを合わせてみようかな」「深いコクと甘みのある黒ビールに、シナモンを効かせたスイーツはどうだろうか?」など、妄想が膨らんでいきます! 実際に試して、クラフトビールとスパイス料理の深い沼にハマってみてくださいね。
レシピ・監修:アンドビール 高円寺/ 文:大瀧亜友美 / 撮影:山﨑悠次
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