冬にいただくタイ料理。体も心も温まるカーオ・ソーイの話
「冬はもういいよ〜」と思うくらい寒い寒い日が続いていますが、そんな時こそ食事で体の芯から温まりませんか。「じゃあ、冬といえば鍋だよね!」いいえ、今回は冬に食べたいタイ料理のレシピをご提案します。タイ料理ってさんさんと降り注ぐ太陽と高温多湿の国のごはんでは?と思った方。タイもまた日本のように南北に長い国土を持ち、多様な地域性と食文化があるのです。北部や東北部など内陸の標高が高いエリアでは、涼しい気候から生まれた独特の料理がたくさん。その1つ、カーオ・ソーイをご紹介します。
福島とタイ。実は似ていた?!
福島ご出身の鈴木先生は、タイでホームステイをしながらお料理を学んでいたとき驚いたことがあったそうです。ステイ先の方は北部出身で、その家庭料理には冬の寒さ厳しい福島同様の漬物や保存食、発酵食品といった親しみのある食材が使われていたのです。「……似てる!」
タイ料理といえば辛さとココナッツミルクのまろやかさが同時に攻めてくるグリーンカレーだったり、酸っぱ辛い味付けだったり、ナンプラーの香り、パクチーをはじめとするハーブ、屋台飯のイメージだったり。それとは全然違うタイ料理と出会い、奥深さにますますのめり込んでいったとのこと。
当時の日本にはまだタイ料理を本格的に学べる環境はあまりなかったので、ステイ先で初めて知る家庭料理もたくさんあったとか。味や気候、人柄、そして年中行事などタイの魅力に直接触れる貴重な経験をし、それが現在のお仕事に結びついています。
カーオ・ソーイが教えてくれるタイの奥行き
タイ北部の郷土料理として愛され、全国へと広まったカーオ・ソーイ。タイでは専門店もたくさんあります。大雑把にはカレー風味の麺料理ですが、実際はそんな一口では片付けられません。日本ではラーメンのように汁たっぷりでいただくことも多いですが、とろみがあってやや少なめの汁が現地のスタイル。そこに茹で麺と揚げ麺両方を入れ、お肉などを入れ、高菜漬けのような漬物などをトッピングしていただきます。
さて、濃厚なスープにはスパイシーさとココナッツミルクの甘味が同居していてクセになる味わい。ちなみにですが、北部や東北部ではココナッツミルクを使わないレシピが一般的です。
また、もともとはタイ北部に近い中国南部、雲南省のムスリム系の人たちから発祥したとされています。なので、トッピングするお肉は牛や鶏がスタンダードです。
タイではお店にカーオ・ソーイを食べにいくと、乗せるお肉を何にするか、どこの部位にするか選んで作ってもらいます。さらにお好みのハーブやライムなどをトッピング。そうして自分だけの味をいただくのも、カーオ・ソーイの楽しみ方のひとつです。
一般的には、古都チェンマイのある北部や、東北部は一見地味でも、独特の発酵調味料などを多用し滋味深い料理がたくさんあります。一方プーケットなどのある南部は豊富な海の食材を入れることも。地理的に真ん中にあるバンコクでは、海や川の恵みを受けた料理、ココナッツミルクを多用した料理、さらに中国から影響を受けた料理も多くあります。また見た目にも美しい宮廷料理はバンコクがある中部の料理です。
タイは国土も歴史も長い国だけに、使う食材や文化も地域ごとに変わるのですね。
作ろう!温まろう!カーオ・ソーイ
スープにはココナッツミルクありで、お肉は鶏手羽元に。今回は比較的どこでも入手できる食材で本格感のあるカーオ・ソーイが作れるレシピを教えていただきました。
最初にスパイスを空炒りするところが本格ポイント。現地のお店で行われる炙ったスパイスを石臼で挽いて、という工程をイメージしています。とーってもいい香りになりますよ。
もしもより本格を追い求めるのであれば、アジア食材の専門店などを探してみるのも。麺やスパイス、調味料に関してはインターネットでも手に入ります。
〈材料〉(2人分)
〈作り方〉
1.フライパンを中火で熱し、Bを入れ、軽く焦げ目がつくまで炒ります。
2.1をフードプロセッサーで撹拌し細かくなったら、Cを入れよく混ぜ合わせます。
3.鍋にAを入れ中火にかけココナッツミルクのオイルが出てきたら、2を入れ炒めます。香りが出てきたら鶏手羽元を加えてさらに炒めます。
4.3にDを入れ、沸騰したらEを加えて15分ほどスープにとろみが出るまで煮ます。(ここで鶏手羽元に火を通します)
5.鍋にたっぷりの湯を沸かし、中華麺をゆで水気を切り、器に盛ります(1/3量はカリッと揚げておきます)。
6.5にスープと鶏手羽元を盛り、揚げた麺をのせ、Fを添えてできあがり!
カーオ・ソーイの少しまったりした濃厚な味わいのスープで、体の芯から温まって寒い冬を乗り切りましょう。今回の「寒い日にタイ料理」、いかがでしたか? きらきらの太陽とほほえみの国というイメージが、食を通して少し変わったら、それもまたうれしいです。
寒い日が続きますが、温かくして、栄養をとって、ぜひご自愛くださいませ。今年もよい一年になりますように。
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