しゃかしゃかと涼をかきこむ、薬味たっぷりの冷や汁
冷や汁、皆さんはお好きですか?食欲が落ちていても不思議とサラサラかきこめてしまう、日本の郷土料理のひとつ「冷や汁」。今回は、チューブ調味料を活用することで、薬味が味噌ベースに溶けこむ!?そんな新感覚の冷や汁のレシピをお届けします……。
レシピと文章は、 発酵料理家の真野遥さん。素材のおいしさを生かしたレシピ提案が得意な真野さんに教えていただく「冷や汁の素」、この夏ぜひ常備しましょう!
7月に入り、いよいよ本格的な夏が到来。
ピカピカのトマトやナス、オクラにゴーヤにとうもろこし! 夏は美味しい野菜がてんこ盛りでワクワクしますよね。
しかし、暑さに弱い私は、いつもは旺盛な食欲が一気に減退…。ついつい、そうめんや冷やし中華などツルツルいける麺ものばかり食べてしまいます。そんな時によく作るのが、さらさらと食べられる「冷や汁」です。
冷や汁は全国に広く存在する郷土料理ですが、特に有名なのは宮崎県。アジなどの焼き魚を白ごまや味噌とともにすり鉢ですり、表面を香ばしく焼いたものを出汁で溶き、きゅうりや豆腐などを加えて麦飯にかけていただく、いわゆる汁かけご飯です。
元々は、麦飯に味噌をのせて水をかけて食べるという質素な食べ方に起源があるそうで、今でも焼き魚で作る冷や汁は贅沢品と捉えられ、地元ではいりこ(煮干し)を使うことも多いとか。
高温多湿な宮崎県で、食欲の出ない夏場でも手軽に美味しく栄養補給できる冷や汁は、夏を乗り切るための知恵と工夫がこらされた日常食だったようです。
そんな夏にぴったりの「冷や汁」を、私は薬味をたっぷり乗せて食べるのが大好き。今回は、梅干しの酸味と山椒のしびれをきかせて、より一層スカッと爽やかに味わえる、「しゃかしゃかと涼をかき込む薬味たっぷり冷や汁」をご紹介いたします!!
焼き魚の代わりにちりめんじゃこを使うことで、とても簡単に作れますよ。トロトロの蒸しナスをたっぷり加えて、食べ応え抜群。大満足の一杯です。
【材料】(2人分)
ナス 2本
ちりめんじゃこ 20g
白ごま 大さじ1と1/2
味噌 大さじ2
S&Bミル付き山椒の実 小さじ1/4程度
S&B梅肉(無着色) 小さじ2
きゅうり 1本
昆布水 300ml
氷 適量
S&Bきざみみょうが 適量
S&Bきざみ青じそ 適量
麦入りごはん 2人分
※昆布水は、水1Lに対して昆布10gを浸して冷蔵庫で1時間以上置いたものを使用します。スープや味噌汁、煮込み料理などに使えますよ。昆布が無ければ、普通の水でもOKです。
※麦入りごはんは、普通のごはんでもOK。
まずは、電子レンジで蒸しナスを作っていきます。(蒸し器がある方は蒸し器を使ってください)
ナスはヘタを切り落とし、皮を剥いてさっと水にさらします。
水けを切ったら、耐熱ボウルに入れてふんわりとラップをかけ、600Wの電子レンジで3分加熱します。
軽く指で押して(火傷しないように気をつけてくださいね!)柔らかくなっているのを確認したら、ラップをかけたまま粗熱を取っておきます。
硬いようでしたら、追加で30秒〜1分ほど加熱してください。
充分に蒸し上がると、全体がみずみずしく潤ったような綺麗な黄緑色になります。まん丸としたフォルムが愛おしいですね。
ちなみに、ナスの皮はくれぐれも捨てないように!! 油で炒めると美味しいですよ。
醤油とみりんで甘辛いきんぴらにするのはもちろん、クミンシードとともに炒めて塩胡椒でシンプルに味付けするのもオススメです。これがもう、ビールのお供にぴったりなんです。
それでは次に、冷や汁のベースとなる味噌ペーストを作ります。
まずは、すり鉢にちりめんじゃこを入れて、すりこぎですりましょう。
少し力が必要ですが、しっかりとすることでじゃこのうま味が汁に溶け出て、美味しい冷や汁になります。
すり鉢が無い場合は、材料をボウルで混ぜるだけでもOKですが、その場合はすりごまを使ってくださいね。
じゃこがふわふわになったら、白ごまを加えてさらにすります。じゃこと白ごまが合わさった時の、この瞬間の香りが最高なんです!
料理は、作っている最中の香りが楽しめるのも醍醐味。香りに酔いしれながら作っていると、だんだん食欲が湧いてくるはずです。
次に、味噌と梅肉を入れ、ミル付き山椒の実をガリガリと削り入れて、さらにすります。
味噌は宮崎県では麦味噌を使いますが、米味噌などご家庭にあるもので大丈夫ですよ。
さあ、これくらいのペースト状になったらOKです。
次に、味噌を焼いていきます。
この一手間をかけることで、「冷製味噌汁」ではなく、確固たる「冷や汁」に変貌するのです。
アルミホイルに味噌を薄く塗って、オーブントースターか魚焼きグリルでこんがり焼きます。(本場では、すり鉢を伏せて直火で炙る作り方もあるそうですよ…!)
このくらい色づくまで、こんがりと香ばしく焼きます。
オーブントースターならだいたい5〜6分ほど。今回は魚焼きグリルの中火で2〜3分ほど焼きました。
味噌を焼くことで、こんがりと香ばしい香りが立ち、さらに食欲を掻き立てます。じゃこの風味やうま味もグンと引き立ちますよ!!
焼いた味噌はすり鉢に戻し入れ、昆布水を少しずつ加えながら伸ばしていきます。
面倒くさければ普通の水でもOKですが、うま味成分のグルタミン酸を多く含む昆布水を使うと、ちりめんじゃこのイノシン酸と合わさって、うま味の相乗効果で爆発的に美味しさが増すのです。
昆布水を全て加えたら、蒸しナスを手でさいて加え、冷蔵庫で冷やしましょう。
しっかり冷えたら、小口切りにしたきゅうりと氷を加えます。(氷はあればで大丈夫ですよ!)
熱々の麦ごはんにかけて、きざみみょうがときざみ青じそをのせれば完成です!
お好みで山椒の実をさらにガリガリ削っても良いでしょう。
暑さを吹き飛ばすような爽快なきざみみょうがときざみ青じその香りが汁に溶け込み、フレッシュの薬味とはまた一味違った美味しさが楽しめます。
トロッと柔らかい蒸しナスに、きゅうりのシャキっと軽快な歯ざわり、梅肉のキュッとした酸味に、一口かき込むたびに鼻腔に広がる鮮烈な薬味の香り!!
みるみるうちに食欲が掻き立てられ、しゃかしゃかと一口、また一口。気づいたらペロリとあっという間に食べきってしまいます。
炙った味噌ペースト(「冷や汁の素」と呼びましょうか)は、そのままアルミホイルに包んで冷蔵庫で1ヶ月ほど保存可能ですので、たっぷり作っておくとすぐに冷や汁を作れて便利です。
アレンジも自由自在。
豆乳やラー油と混ぜてうどんにかければ、辛さとしびれが美味しいコクうま麻辣(マーラー)うどんに!!
【材料】(1人分)
冷や汁の素(炙った味噌ペースト) 大さじ2
(A)豆乳(無調整) 100ml
(A)醤油 小さじ1
(A)ごま油 小さじ1
(A)ラー油 少々
うどん 1玉
お好みのトッピング 適宜
作り方はとっても簡単。
冷や汁の素に(A)を加えて混ぜたら、茹でた冷うどんにかけるだけです。お好みでトマトやきゅうり、刻みねぎなどをトッピングしてくださいね。
もちろん、そうめんや中華麺を使っても美味しいですよ。
このスープが本当に美味しいので、私は残ったスープにご飯を入れて残さず食べ切ってしまいます。これまた、もうたまらなくウマい!!
…あれ?食欲減退どころか、ちょっと食べ過ぎのようですね。笑
夏バテを吹き飛ばしてくれる、爽快感あふれる薬味たっぷり冷や汁。
朝ごはんやお昼ごはん、お酒を飲んだ後の〆のご飯など、様々なシーンで夏の食卓に取り入れてみてくださいね!!
今回のレシピ、文章、撮影:真野遥(発酵料理家)
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